ケーススタディ

AIに引用された回数を、実数で見た。3か月で33,000回──でもクリックは桁が違う

先に結論

自社で運営する占いメディア(VEIL)が、AIに引用された回数を実数で見ました

Bing Webmaster Toolsの「AI Performance」というベータ機能を開くと、MicrosoftのCopilotなどのAIが回答を作るときに、このサイトをどれだけ引用したかが出てきます。数字はこうでした。

  • 3か月で約33,000回引用された(2026年3月4日〜6月3日)
  • 引用のきっかけになった問いは346種類
  • 1日あたりの引用は、3月初めの約100回から、5月末には約3,000回へ。およそ30倍に伸びていた

いっぽうで、同じ期間にAIから実際にクリックされてサイトに来た数は、引用回数よりずっと少ない。引用は数万回、クリックは月に数千。この差が、いま起きている「ゼロクリック」の正体です。

推測ではなく、管理画面の実数で見ていきます。

Bing Webmaster Tools/AI Performance(実画面) ── 引用元は「Microsoft Copilots and Partners」。3か月でCitations 33K。3月の床ばいから、5月末にかけて右肩上がりに立ち上がっている
Bing Webmaster ToolsのAI Performance画面。masanosuke.netの3か月の被引用数が33K、平均引用ページ数が91。CitationsとCited Pagesの折れ線が、3月のほぼ0から5月末の3,500前後まで右肩上がりに伸びている

再現したグラフではなく、実際の管理画面です。


「被引用」とは何か。クリックとは別の物差し

ここで言う「引用(Citation)」は、アクセス数ではありません。

ChatGPTやCopilotにものを尋ねると、AIは自分の言葉で答えを返します。そのとき裏側で、AIはいくつかのWebページを下敷きにしています。「この問いには、このサイトのこの記述が使える」と判断して、回答の根拠に組み込む。これが引用(grounding)です。

問題は、引用されてもユーザーがサイトに来るとは限らないこと。AIが答えを言い切ってしまえば、ユーザーは出典リンクを踏みません。だから従来のアクセス解析では、引用は影も形も見えない。クリックになった分だけが流入として記録され、引用されただけで終わった大多数は数字に残らない。

Bing Webmaster ToolsのAI Performanceは、その見えなかった側を見せてくれます。Microsoft CopilotとそのパートナーAIが、自社サイトを何回引用したか。どの問いで引用されたか。何ページ使われたか。Googleのサーチコンソールにも、GA4にもない数字です。


33,000回という数字の中身

グラフの数字を分解します。すべて実測値です。

指標期間
引用回数(Citations)約33,000回3か月(3/4〜6/3)
引用のきっかけになった問い346種類同上
1日あたりの平均引用ページ数91ページ同上
引用元Microsoft Copilots and Partners

1日の引用回数は、こう動いていました。

  • 3月初め:1日 約100〜200回
  • 3月末:1日 約300〜600回
  • 4月:1日 約1,000〜1,800回
  • 5月末:1日 約2,400〜3,100回

3か月でおよそ30倍。じわじわではなく、4月に入ってから一段、また一段と階段を上がるように増えています。コンテンツがAIのインデックスに浸透し、引用の対象として定着していく過程が、そのまま線になっていました。

ここで大事なのは、伸びに時間差があるということ。記事を出してすぐ引用されるわけではない。AIが「このサイトは信頼して使える」と扱うまでに、数週間から数か月の蓄積がかかっている。GEOが即効性のある施策ではないことが、この曲線に表れています。


どんな問いで、引用されたか

346の問いのうち、引用が多かった上位を見ると、はっきりした傾向がありました。

  • 「◯◯とは」の定義系 ── 言葉の意味を尋ねる問い。トップの問いは単独で1,500回引用されていた
  • 「◯◯の見方」のhow系 ── やり方・読み方を尋ねる問い。500〜600回台が並ぶ
  • 「◯◯ 相性」「◯◯ 性格」の分類系 ── 特定のカテゴリに当てはめて答える問い

共通するのは、答えが一つに定まり、短く言い切れる問いだということ。AIは、長い読み物の中から答えを探すより、見出しの直下に結論が置かれているページを好みます。「この問いには、この一文」とひもづけやすいページが、繰り返し引用されていました。

逆に言えば、引用されたいなら問いの形で見出しを立て、その直後に結論を置く。当サイトのAIに引用される書き方で書いた原則が、実データでも裏付けられた形です。


引用は多い。でもクリックは桁が違う

ここがこの記事の山です。

3か月で33,000回引用された同じサイトで、AIを参照元とする実際の流入は、月におよそ2,000セッションでした(GA4の実測。ChatGPT・Copilot・Perplexityなどを参照元とするセッション)。

月あたりに直すと、引用は約11,000回、クリックは約2,000。引用された回数のほうが、実際に来た回数より何倍も多い

これがゼロクリックの実像です。AIはあなたのサイトの中身を使って答えている。けれど、その答えを読んだ人の多くは、あなたのサイトに来ない。アクセス解析だけを見ていると「流入が少ない」としか見えませんが、裏側では読まれていないのに使われている。ブランド名や情報が、AIの口を通じて人に届いている。

これを損失と見るか、露出と見るか。クリックだけを成果とするビジネスなら、ゼロクリックは取りこぼしです。けれど、名前を知ってもらう・正しい情報を広めることに価値があるなら、引用は立派な成果になります。少なくとも、見ない理由はない。クリックの数字の裏に、その5倍規模の「使われた回数」が隠れているのですから。

(引用とクリックは別の仕組みで数えた数字です。きれいな倍率で割り切れるものではなく、「引用は桁が一つ大きい」という規模感として捉えてください。アクセスがすべてではない話は流入は売上ではないでも触れています。)


注意:これは「全体の一部」

正直に書いておきます。AI Performanceの画面には、こう注記があります。

The data shown below represents a sample of overall activity.(表示データは全体の活動の一部です)

つまり33,000回は、Microsoftが把握している引用のサンプルであって、全数ではない。実際の引用はこれより多い可能性があります。さらにこの数字はCopilotとそのパートナー経由のもので、ChatGPTやGoogleのAI Overviewでの引用は含まれていません。それらを足せば、AIに使われている総量はもっと大きいはずです。

数字を大きく見せたいわけではありません。むしろ逆で、「実数といっても全数ではない」という限界も含めて出すのが、このサイトの方針です。それでも、サンプルですら33,000回。AIに使われる量が、もうアクセス解析で測れる規模を超えていることは間違いありません。


あなたのサイトでも見られる。手順

特別なツールはいりません。無料のBing Webmaster Toolsだけで見られます。

  1. Bing Webmaster Toolsに登録し、自分のサイトを追加する(GoogleサーチコンソールからインポートでもOK)
  2. 左メニューの 「AI Performance」(ベータ) を開く
  3. 期間を「3か月」にして、Citations(引用回数)Grounding Queries(引用された問い) を見る
  4. 「ページ」タブで、どのURLが引用されているかを確認する

ここで引用ゼロなら、そもそもAIに見つけられていない可能性があります。その場合は、まずAIクローラーを受け入れる設定Bingへの登録から。Bingのインデックスは、その先のCopilotやChatGPTの引用につながる入口です。


まとめ

  • 自社の占いメディアは、3か月でAIに約33,000回引用されていた(Bing Webmaster Tools実測、サンプル値)
  • 引用のきっかけは346の問い。「◯◯とは」の定義系、「◯◯の見方」のhow系に集中
  • 引用は3か月で約30倍に伸びた。即効性はなく、蓄積に時間差がある
  • 引用はクリックより桁が大きい。読まれていないのに使われている=ゼロクリックの実像
  • この数字はアクセス解析にも順位ツールにも出ない。AI Performanceでしか見えない

クリックの数字だけを見て「AIからの流入は少ない」と判断するのは、早い。その裏で、サイトはAIに何万回と使われているかもしれません。まず一度、自分のサイトの被引用数を見てみてください。見えていなかった成果が、そこにあるかもしれません。


この記事は、当社が運営する占いメディア(VEIL/masanosuke.net)のBing Webmaster Tools実データ(2026年3月〜6月)をもとに書いています。数値はすべて管理画面の実測値で、表示はMicrosoftによるサンプルである旨を併記しました。

AL

AIO Lab 主筆

広告運用 × データ分析のマーケター(40代・エンジニア出身)

Meta・Google・TikTok広告のインハウス運用が最も得意。ROAS・CPA起点の高速PDCAで伸ばし、広告と検索(SEO・GEO)の両面から集客を設計します。強みはデータの「見える化」——GA4・BigQuery・日次広告レポートで、数字を判断に変えること。大手予約サービスのマーケ部長を経て、現在はD2Cスタートアップでマーケ/データ責任者。複数の自社メディアを運営し、Bing・AI検索の流入を実データで検証しています。数値はすべて実測、出典のないデータは扱いません。運営者について →

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